「ねえ敬くん」



「ん?」


もうすでにそのあだ名を受け入れている自分にも驚きを隠せないのだけれども。



彼女は何かを言おうとしたが、口を押さえた。


「どうした」


「ううん。なんでもない。さあ帰ろう」



「なんだよ、言ってよ」



「何でもないってば」



それ以上僕は追求しなかった。



そんなことはどうでもいいとも思えた。