ひかるなら自分じゃなくて、伊崎と言う男と一緒にいた方が幸せになる。

自分のせいで、彼女を不幸な目にあわせなくて済んだのだ。

結果としてはこれでいいのだ。

そう自分に言い聞かせると、豪は牛カルビ弁当を頬張った。

しょっぱかった。

その味をかき消すようにみそ汁を口に含んだけれど、
「――しょっぱ…」

舌を出して、呟いた。

最後に…あの街を去る前に、ひかるの作ったご飯を食べたかった。

ニコニコと笑いながら自分を見つめているひかるの顔を見たかった。

だけど、もうそれはかなわない願いだ。

自分は借金の返済と引き換えに、ひかるの前からいなくなることを選んだのだ。

「――ごめん、ひかるちゃん…」

また彼女の前から何も言わずにいなくなってしまったことに、豪は呟いた。

そして、ひかるが自分を忘れてくれることを心の底から願った。