伊崎はフッと口元をゆるめて笑みをこぼすと、
「僕は、彼女が作るオブジェのファンなんです。

まあ、ひかるさんそのものも好きなんですけれども…彼女に“好きな人がいる”と言って振られてしまったんです」
と、言った。

「好きな人、ですか…?」

そう聞いた豪に、
「それはもちろん、黒田さんのことですよ。

ひかるさんとは、小学校の時の同級生だそうで」

伊崎は言い返した。

「はい、そうです」

豪は首を縦に振ってうなずいた。

「それで、どうして…」

「ああ、そうでしたね」

伊崎は思い出したと言うように返事をすると、
「借金を抱えられているそうですね」
と、言った。

「えっ…?」

何でそんなことを知っているのだろう?

豪は訳がわからなかった。