告白を断っていたのは、初恋相手である豪のことを忘れることができないからだった。

伊崎のようにどうしてもと言われて仕方なく交際をすることはあったけれど、心のどこかで豪と比べている自分がいて長続きをすることができなかった。

夕飯はナポリタンにしようと思いながら冷蔵庫を開けると、
「あっ、ケチャップが切れてる…」

少ししかないケチャップが冷蔵庫にあったので、それを取り出した。

ケチャップの買い置きを探してみたものの、１本もなかった。

「仕方ない、買ってこよう」

ひかるは財布を手に持つと家を出て、近くのコンビニへと足を向かわせた。

「いらっしゃいませー」

店員の声を聞き流すと、ひかるは調味料の棚に向かった。

ケチャップを手に持ってレジへと行こうとした時、おにぎりの売り場に１人の男がいることに気づいた。