豪は泣いていて、頬が赤く腫れあがっていた。

「ど、どうしたの!?

何があったの!?」

どこか大人びた彼の泣いている顔に、ひかるはどうすればいいのかわからなかった。

「もしかして、いじめられたの!?

例えば、石井とか石井とか石井とか…」

石井とは、クラスのガキ大将的存在の男だ。

躰が同級生たちよりも大きく、柔道を習っていると言うこともあってかケンカはとても強くて、いつも子分を引き連れて歩いている。

「――違うよ、石井に何もされてない」

オタオタしているひかるに、豪が冷静に言った。

「えっ、じゃあ…」

石井じゃなかったら、どうして泣いているのだろうか?

「借金取りがきているんだ…」

豪が呟くように言った。