「へえ。じゃあ立川さんの彼氏は大変だな」

「かっ、彼氏?!」


まさかの恋バナ?!
意外にも金属アレルギーに食い付いた小林さんは、少し楽しそうに感じられる声色で続けた。


「金属アレルギーのある彼女には、ヘタなもの贈れないだろ。……立川さんもいいやつを強請っとかないと」

「あ、いや……私は……」


何だか話がおかしな方向に進んでしまった。実在しない私の彼氏の話をされても虚しくなるだけだったので、流れを変えようときょろきょろと車内を見渡す。きらりと光るものを見つけて、これだと思った。


「私は、貰うなら高級なアクセサリーよりも、こういうかわいいものがいいです!」


そして私は、咄嗟に指さしていた。

運転席と助手席の間にある、コンソールボックスに置かれていた車のスマートキー。そこにころんとくっついていたペンギンのキーホルダーを。

駐車場で車に乗る前に視界に入ってきた、揺れていたものの正体はどうやらこれだったようだ。全体的に丸いフォルムで、羽根とくちばしが可動式になっており、車がカーブを曲がる度に小さな音を立てて転がっている。


「え? あ、ああ、そうだな……」


すると今度は私の焦りが伝染したかように小林さんが頭をかいて、それきり車内は静かになってしまった。


小林さんの急変した態度が不思議ではあったが、何とかボロを出さずに話題を終わらせることができた私は、今度こそ本当に安堵の息を吐いた。