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「立川さん。それ、どこまで終わってる?」


昼休憩を終えて席に戻った私に問いかけたのは、外から戻ってきた小林さんだった。


「あっ、えっと、半分くらいです」


所長と村山さんは昼前から連れ立って出かけており、午後は小林さんが所内にいてくれるようだ。
昨日から村山さんに頼まれている集計データ入力の進捗を急に尋ねられ、焦りながら回答する。


「ああ、その調子ならいいよ。十分。
ーー午後は手伝って欲しいことがあるんだけど、こっちに来てもらってもいい?」

(こっち、って……)


ちら、と視線を向けたのは、小林さんの隣にある空いた席だ。どう考えても隣に来て欲しいと言われている。突然降って沸いた展開に、思わず気持ちが高揚した。


「はいっ! 喜んで!」


嬉しさが募って勢い込むと、意表を突かれたのかくぐもった笑い声が聞こえてくる。


「もしかして、居酒屋でバイトしてるとか?」


笑うと目元にできる皺が、私の心を乱気流の中へ放り込む。小林さんの、この不意打ちのような笑顔が私を不安定にさせるのだ。

私は体温が上がっていくのを感じながら、席を移動することになった。