「今日はツイてるな」
「そうですね。並ばずに入れたのは久しぶりかも」
そんな風に二人が話しているのを聞いて、非常に人気のある店なのだと知る。私は温かい気持ちを抱えたまま、メニュー表へと視線を落とした。
(どれにしよう……)
思っていたよりもラーメンの種類が沢山あり、私は早速目移りしてしまう。
「俺はネギラーメンかな。村山は?」
「この新作の担々麺にしようっと。……サナギちゃん、決まった?」
「えっ、ちょ、ちょっと待ってください!」
あっという間に注文を決める二人に対して、私は全く決められなかった。焦ってまた最初のメニューから見始めた私に、前に座る二人からは笑いが漏れる。
「どれも美味いから、ゆっくり選んで」
「そうそう。時間はあるから大丈夫、大丈夫」
「すみません……」
家族や友達と食事に行っても、いつも最後まで決められずにもたついてしまう。そのくせ人が選んだものに影響されやすく、自分の意志がないと指摘されてばかり。
ーー私は、本当に面倒くさい性格だ。
(初めて来たお店だし、ここはやっぱりオーソドックスなラーメンかな。でも、村山さんが選んだ担々麺も美味しそう……)
「サナギちゃん」
ハッとして顔を上げると、右手で頬杖を付いたままの村山さんと目が合った。焦ってドツボにハマっている私を楽しそうに眺めていたようで、口元がにやにやと笑っている。
ーーあ、悪趣味……!



