玄関を開けると、ひゅうっと冷たい風が吹き込んできた。
いつものペースよりも速く歩く。
遅刻5分前に学校に着いた。
教室を開けると、いつも通りの光景があった。
でも、何かが違かった。
1人1人の行動、表情、今まで気にしていなかった教室の壁に貼ってある掲示物、なぜか細かいところまで良く見える。
一時一時の全てが目に焼き付けられているようだった。
(病気だから?世界の見え方が違う...)
世界が昨日とはまるで違かった。
教室を見渡していると、
「瑠花ー!おはよー!...ってどうしたの?なんか初めてこの教室に入ったって感じの顔してるよ!」
彼女は私の幼稚園からの幼馴染の親友の佳奈。
面倒見のいい、スラッとした顔立ちの女の子だ。
「あ、...おはよ...。」
「どうしたの?元気ないじゃん!」
もちろん、佳奈に病気のことは隠しているつもりだ。
私が死ぬまで...。
佳奈に話すと、優しいから、きっと心配してしまうだろう。
「え...私、元気だよ!すっごく!」
無理矢理笑顔を作って見せた。
「え...やっぱりなんか変だよ。私に何か隠してるでしょ。何年付き合ってきてると思ってんの!」
「だから本当に何も隠してないってー!」
「えー、だってー...............」
キーンコーンカーンコーン
佳奈が何かを言おうとしたところでチャイムがなった。
(誤魔化せた...。)
担任の深谷先生が教室に入ってくる。
私たちは急いで席についた。