「おう、じゃあなっ!」
「……うん。ばいばい」
笑うと、圭吾は嬉しそうに笑ってくれた。
こんな優しい彼を泣かせて良いの?
そんなに、貴方は冷たい子?
「……そんなの、わかんないし」
“ガチャン”
ドアを開けて、誰もいなくて。
けど圭吾は上げない自分がいて。
それって何のため?
見栄?
たんに彼を隠したいの?
お父さんが怖いんでしょ?
「違う……!」
自分が出したと思った声より
少し高い声が出た。
震える肩が、切なく思えた。
今は、誰も味方になってくれない。
そうやって、
現実から逃げようとしていた。
「違う、違う違う……!」
流れる涙が、しょっぱくて。
私は崩れるようにベッドへ転がった。


