五月雨・弐










「おう、じゃあなっ!」
「……うん。ばいばい」

笑うと、圭吾は嬉しそうに笑ってくれた。
こんな優しい彼を泣かせて良いの?
そんなに、貴方は冷たい子?

「……そんなの、わかんないし」

“ガチャン”

ドアを開けて、誰もいなくて。
けど圭吾は上げない自分がいて。
それって何のため?

見栄?
たんに彼を隠したいの?
お父さんが怖いんでしょ?

「違う……!」

自分が出したと思った声より
少し高い声が出た。
震える肩が、切なく思えた。

今は、誰も味方になってくれない。
そうやって、
現実から逃げようとしていた。

「違う、違う違う……!」

流れる涙が、しょっぱくて。
私は崩れるようにベッドへ転がった。