五月雨・弐










「分かんないとか、分かるとか……。」
「俺だって、何も知らねえよ。」

これは、偽善者?
でもそれでも良かった。

必要とされているという陶酔でも
私は十分満たされていた。
それで、もう少し生きれる気がした。

「ごめん……。」
「今さら自分のしたことが分かったか。」
「ありがとう……。」

涙が止まらなかった。
幾度拭いても流れる涙が
私の身体を小刻みに震わせていた。

「ばいばい……。」
「は……?」

“ガシャン!”

「まだ死のうとしてる?」
「……違う。」
「じゃあ、何?」

高橋の問い詰めに、答えるのを拒んだ。
けれど、流される。
彼の眼を見たからだ。

涙が溢れそうな、彼の眼を。

「……転校するんだ!」

嘘は、吐けなかった。