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「やられましたね」



俺ん家に突然来たリュウが、優雅にコーヒーを飲みながら言った。

「お前、ホントいつも突然来るのな」

「なぜか、雄大がピンチのとき、僕には分かるんですよ」

「こえーな、、、」

「深い友情だと受け取って下さい」

「ばーか」

「ーーーで、処分は出たんですか?」

「ああ、まぁな」

「…そうですか」

【生徒を守るためとはいえ、女子生徒を学校に報告もなく保護するのは間違っている】との判断で、俺は処分として他校へ飛ばされることになった。

俺が他校へ転勤になる理由は生徒達には言わず、一身上の都合ということで全校集会で挨拶をする予定だ。

「あの女、どうにかしないとな…」

「そうですね。あの手の女性はしつこいので、藤崎さんに何をするか分からないですからね」

「藤崎に手は絶対に出させねーよ。あの女を藤崎から遠ざける。二度と関われないようにしておかねーとな」

俺は引き出しの中になおしていた封筒を手に取る。

コレであの女を黙らせてやる。

「このことは、本当に藤崎さんには言わなくていいんですか?」

リュウが心配そうな表情で言った。

「藤崎には何も知らせなくていい。余計な心配をさせたくないからな」

彼女がこのことを知れば、きっと責任を感じてしまうだろう。

俺が彼女を守るために勝手にしたことだ。

彼女に責任はない。

学校側には、藤崎に一切何も言わないで欲しいと懇願してきた。

それを条件に、今回俺は他校へ行くことを受け入れたんだ。

「これから彼女のこと…どうするんですか?」

藤崎のことは、この謹慎中に何度も何度も考えた。

今回、俺は彼女を完璧に守り抜くことが出来なかった。

俺と付き合っていることがバレたら、彼女のイメージに傷がつく。

彼女の将来に俺は重荷なんじゃないか?

苦しめるだけじゃないのか?

俺が教師である限り、公に付き合うことも出来ないし、他校に行くとなると、会う時間も少なくなって寂しい想いをさせるだろう。

近くで彼女を見守ることさえも出来なくなる。

……そんな彼氏って必要あるのか?

それに、俺は施設出身だ。

奨学金という借金もある。

俺は……相応わしくない。




「藤崎とは別れるよ」





それが彼女にとって一番幸せになれる方法だ。