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雨宮先生が保健室に来なくなり、早一週間が経った。

今日は朝早くから雨が降っていて、うす暗くジメジメとしている。

俺は職場である保健室から、ココアを飲みながら窓の外を眺めていた。

「…こんな日って、なんかあるような気がするんだよなぁ」

ボソッと何気なく呟いたこの言葉が、このあと的中することとなる。

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今、俺は校長に呼び出され、校長室の前に立っている。

コンコン…

ドアを軽くノックしてから「失礼します」と校長室へ入った。

中に入ると、正面にテーブルとソファがあり、その奥に校長の立派な机と椅子がある。

その立派な背もたれの椅子に、困惑した顔の校長が座り、隣には険しい顔の教頭が立っていた。

「…朝から呼び出してすまなかったね、瀬良君。少し、、、君に確認しておきたいことがあってね」

校長が重い口を開いた。

「どのようなことでしょうか」

俺が答えると、間髪入れずに教頭が真っ赤な顔をして、

「きっ君はっ、何をしたのか分かってないのかっ!!恥を知りなさいっ!!」

キーッとヒステリックを起こしている。

俺はそんな教頭を見て内心「人のこと言えんのかよ」とバカにしていた。

校長が教頭を「まぁ、まぁ」となだめてから、俺の方をじっと見てきた。

「どのようなことでしょうか」

俺は冷静にもう一度、聞き直す。

「実はね….こんなFAXが私の元へ届いたんですよ。瀬良先生、心当たりはありますか?」

校長が俺に一枚の紙を渡した。

ーーーーーっ!?

なんだよっ、コレ。

マジか。

まさか….こんな写真を撮られてただなんて。

その紙には、俺と藤崎がマンションから出てきたところの写真だった。

俺が藤崎の頭に手を乗っけてる写真。

確かにこの写真だけを見ると、俺たちが恋愛関係にあると思われても仕方がない。

でも、このときは…まだ付き合ってない。

俺が藤崎を親から預かっているときだ。

こんな前の写真….一体どこから?

ーーーって考えるまでもないか。

あの女だ。

その証拠に、写真の端に赤い爪先が写り込んでいる。

あの女…やってくれんじゃねーか。

「瀬良君、説明してもらえますか?」

校長が今度は少し不安そうな顔で言った。

「はい」

俺は今付き合っていることだけ伏せて、全てを話した。

藤崎が母親と不仲だったこと、母親の彼氏のこと、そして、それらから彼女を守るために親の承諾を得て自宅で預かっていたこと。

「報告もなしに身勝手な行動をして、申し訳ありませんでした」

俺は校長と教頭に深々と頭を下げる。

「事情は分かりました。しかし、教師としての役割を超えていると思います。処分についてはおって連絡をしますので、今日はご自宅に戻って待機しておいて下さい」

校長からそう告げられ、俺は素直に「はい」と答えた。

でも、これだけは言っておかないと…。

これだけは、土下座をしてでも聞き入れてもらわないといけない。




「一つだけお願いがあります」