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瀬良先生と付き合いだして少し経ち、怪我が治った頃。




「そういうことですか」



リュウさんが優しく美しく微笑んだ。

ここは、私が少し前まで住んでいた瀬良先生のお家。

私たちは、先生と生徒という立場上、公に付き合うことは出来ない。

学校以外で会えないのは寂しいと私が言ったところ、瀬良先生が「俺ん家に来る?」と言ってくれたので、お家デートをするとこになった。

久しぶりに瀬良先生に夜ご飯を作ってあげていたところ、リュウさんが遊びに来たんだ。

「急に遊びに来んなよ、リュウ」

瀬良先生は、ソファに座り少し不機嫌そうにしている。

「急にお邪魔してすみません、藤崎さん」

リュウさんが、キッチンでトマトを切っている私に声を掛けた。

「えっ⁈いえ、あのっ///」

私が焦って困っていると、瀬良先生がキッチンの入り口にいるリュウさんの所へ来て、

「ここは、俺の家。そのセリフは俺に言えよ、リュウ」

と言い、ビール二本を冷蔵庫から取り出してからリュウさんをリビングへ連れて行く。

そして二人はビールをカシュッと開け、コツンッと軽く缶を当ててからグイッと美味しそうに飲んだ。

「ーーーで?どうだった?」

瀬良先生がボソッと私に聞こえないように、リュウさんに近づいて言う。

「雄大の言う通りでしたよ。バッチリ押さえときました」

「さすが、リュウ。悪かったな、変なこと頼んで」

「いえ、全く問題ありませんよ。お安い御用です」

キッチンにいる私には、何のことなのか分からなくて「少し寂しいな」なんて思っていると、

「今日のメシって何?」

気がつけば瀬良先生がキッチンに居て、背後から私の手元を覗いてきた。

瀬良先生の声が突然、耳元から聞こえてきたので私の心臓はドクンドクンとなっている。

「きょ、今日は、煮魚と牛蒡のサラダです」

「おっ、美味そうじゃん。最近、コンビニ弁当ばっかだったから助かるよ」

そう言って、背後からぎゅっとしてきた瀬良先生。

付き合ってからの瀬良先生は、とても私を大切にしてくれる。

しかも、こうやって頻繁にスキンシップを取ってくるから、私の心はいつもドキドキとさせられっぱなしで…///

「あの…、は、離れて///」

「なんで?」

「そ、の…リュウさんもおられることですし///」

人前でこうゆう状態は、ちょっと恥ずかしいよ///

「だってよ。リュウ、お前帰れよ」

瀬良先生は、リビングでビールを飲んでいるリュウさんに言った。

「ちょっ、なんて失礼ことを言うんですかっ。リュウさん、ゆくっりして行って下さい。そうだっ、良かったらリュウさんもご飯を一緒に食べませんか?」

私は慌てて瀬良先生の口を押さながら言う。

「ふふ…ありがとうございます。では、お言葉に甘えてご相伴にあずからせて頂きます」

リュウさんは、優しく微笑みながら言った。

本当にリュウさんがヤクザさんだなんて思えないな。

だって、こんなに優しく笑えるし上品な仕草だし、女の私でさえ見惚れてしまうくらいなのに。

最近のヤクザさんって皆んなこんな感じなのかな?

「リュウのこの笑顔に騙されんじゃねーぞ」

ククッと笑いながらリビングに行った瀬良先生。

「…?」

意味が分からず私が首を傾げていると

「僕には二面性があるってことですよ」

ニッコリと笑って言ったリュウさん。

「本当のリュウはマジで怖ぇぞ」

意地悪そうに笑いながら、瀬良先生はグビッとビールを美味しそうに飲んでいる。

「リュウさんは、良い人です。怖くなんてありません」

私は、出来上がったご飯を持ってリビングへ行った。

「藤崎さんて、本当に可愛い人ですね。雄大なんてやめて僕にしませんか?」

リュウさんが私の手をそっと握る。

「あ、あのっ///」

私が焦っていると、背後からお腹の辺りに腕がまわってきて軽く持ち上げられたかと思うと、気付けば瀬良先生の膝の上に座らされていた。

「リュウ、俺の女に手を出すな」

私を背後から、ぎゅっと抱きしめ言った瀬良先生。

ほら、瀬良先生はこうやって、簡単に私をドキドキとさせるんだ///

「残念ですね。では、雄大に飽きたらいつでも僕のところへ来て下さいね」

そう言って、艶っぽくウィインクをしたリュウさんに一瞬ドキッとなる。

「さ、冷めちゃうから、早くご飯を食べましょう///」

久しぶりに三人で囲んだ食卓は、とても楽しくあっと言う間に過ぎていったんだ。