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「そこで大人しく寝てろ」



半ば強引に抱きかかえられ連れて来られた保健室。

私はベッドの上に降ろされ寝かされる。

「念のため、これで熱を計っとけ」

体温計を差し出されたけど、私は受け取らなかった。

「なに?俺に脱がされたいの?」

「それ、セクハラですからっ///」

「クク…はい、はい。じゃ、脱がされたくなかったら、大人しく熱を計って下さいね」

もぉっ!何なのっコイツ!

めちゃくちゃ腹が立つんですけどっ!

悔しいけど本当にコイツならやりかねないと思った私は、素直に熱を計る。

しばらくして、ピピッと音が鳴り体温計を脇から出すと、瀬良先生が私の手から体温計を取り上げ確認をした。

「熱はねーな。じゃ、とりあえず、今からお前は寝ろ。ひたすらに眠れ」

「は?」

「お前、あんまり眠れてないんじゃねーの?」

「別に」

「目の下の隈、すげぇぞ」

と指をさされ、慌てて目を手で覆った。

「ぷっ、嘘だよ、隈なんてないよ。やっぱ、眠れてねーじゃん」

「なっ///」

悔しいっ!騙されたっ‼︎

「マジむかつく…」

「ムカついてても何でもいいから寝ろ」

そう言ってカーテンを閉め出て行く瀬良先生。

カタッと音がしたので、どうやらすぐそこにある椅子に座ったようだ。

まぁ、本当に寝不足だし…寝ようかな。

私はベッドに寝転び天井を見上げる。

それにしても、変な先生だな。

自分勝手で強引で口が悪くて…

でも、ちゃんと生徒のことを見てて、さ。

こんな先生、初めてだ。

なんだかホッとした気持ちになり、私はすぐに眠りについてしまった。



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ふと目が覚めて辺りを見渡すと、うす暗くなっていた。

スカートのポケットからスマホを出して時間を確認する。

「え、嘘…六時?」

一瞬、自分の目を疑った。

だって…私が保健室に来たのって一時くらいだったはず。

私、五時間もここで寝てたの?

私は慌ててベッドから降りてカーテンを開ける。

「ん?起きたのか?」

瀬良先生が机の上にある書類に目を通しながら言った。

ひょっとして、この人、五時間もずっとここに居てくれたの?

「よく、眠れたか?」

「んー」と背伸びをする瀬良先生。

バカなんじゃないの?この人。

「どうして起こさなかったんですか?」

「どうして?って、気持ち良さそうに寝てたからな。無理に起こす必要もねーし」

「私のせいで…帰れなかったんじゃないですか?」

「ぷっ、お前、意外と優しいとこがあるんだな」

「う、煩いです///」

「まぁ、気にすんな。俺も仕事があって残ってるだけだし、この後の歓迎会までの空き時間だったからよ」

「…そうですか」

「それより、お前、体調はどうなんだよ」

「寝たので大丈夫です」

「ん、了解。お前、クラスと名前教えて」

「は?嫌です」

「クク…うわぁ、生意気ぃ。俺も別に聞きたく無いんだけど、記録つけなくちゃいけねーんだわ」

瀬良先生は肩を揺らし笑いを堪えながら、PCを開いた。

なんか勘違いしちゃって、恥ずかしいっ///

だって、瀬良先生がなんとなくチャラいから、ナンパされたような気になっちゃたんだよ///

「…藤崎 陽菜」

「ふーん、陽菜か。可愛いな」

私の名前を打ち込みながら言った。

「煩いです///」

やっぱり、なんかこの人チャラい///

今朝は「可愛くない女」って…

体育館では「冷たい女」って言ったじゃん。

急に「可愛い」だなんて言わないでよね///

ううん、名前の事だってわかってる。

わかってるけど…………

瀬良先生に言われると、なんだか落ち着かないい気持ちになるのは

なぜ?