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放課後の保健室。

開いている窓から風と共に、野球部やサッカー部のかけ声が聞こえてくる。




「……すき」




私は涙をポロポロと零しながら、瀬良先生に告白をした。

私が瀬良先生の目をじっと見つめていると、瀬良先生は私から直ぐに視線を逸らし立ち上がる。

そして私に背を向けて、

「治療は終わったから帰っていいよ」

聞こえなかったフリをし、私の告白を無かったことにした。

「…ず、るい、ズルイよっ瀬良先生。目を逸らさないでよっ。人と話をする時は目を見なきゃいけないって言ったのは瀬良先生だよっ!」

私の感情は爆発してしまって、言葉も涙ももう止まらない。

「私の気持ちに応えられないなら、もう構ったりしないでっ。助けに来たりなんてしないでっ。……期待なんてさせないでよっ!」

止めどなく流れる涙を腕で擦りながら、私は椅子から立ち上がる。

何も言わずに背を向けたままの瀬良先生を見て、私はもう何を言ってもダメなんだと思った。

「…ご、めんなさい。帰り…ます」

私が保健室を出て行こうとすると、

「待て…」

瀬良先生が絞り出したような声で言った。

私が振り返ると、瀬良先生はゆっくりとこちらに近づいてきて、

「…泣くなよ」

そう言って、濡れている私の頬を大きな手で優しく拭う。

「お前に泣かれると弱いんだよ…俺」

見上げると、瀬良先生は切なそうな目で私を見つめていた。

「…瀬良先生は、私のこと……どう、思ってますか?」

「……………俺は、、、」

瀬良先生が次の言葉を発する直前ーーー






「藤崎さんっ!」






ガラッと勢いよくドアが開いた。




「…まきの、くん」




牧野くんは息を切らし、必死に走って来たようだった。



「触らないで下さいっ」



瀬良先生を睨みながら低い声で言った牧野くんは、瀬良先生から奪い返すように私の肩を引き寄せる。

「ま、牧野くん///⁈」

「瀬良先生にとって彼女は、生徒以外の何者でもないんですよね?だったら、気安く彼女に触らないでもらえますか?」

真っ直ぐに瀬良先生を見ている牧野くんは、今までに見たこともないくらい怖い顔をしていた。

瀬良先生が牧野くんから、ゆっくりと私に視線を移す。

私の鼓動がドクンッと大きく波打った。

瀬良先生は一度、唇をキュッと結んでからハッキリと言う。



「俺は、生徒である藤崎の気持ちには応えられない」



私はトドメを刺された。