「え?ちょっと、七鬼君。どうしたの?」私は七鬼君を見たが、七鬼君はずっと少女を見ていた。すると、少女が突然口を開いた。
「七鬼君。意外と力が高いんだね。明日、七鬼君のところに行こうと思ってたけど、まぁいいや。今から、一緒に来てくれない?」
「意味分かんねぇやつに誰がのこのこと付いて行くか。こいつが行くなら俺らも行くに決まってんだろ。」と、山下君が割って入った瞬間、その少女の目つきが外見に似合わないほど、真剣なものになった。
「本当に来るの?後悔しても知らないよ?・・・」私は、その言葉の意味が気になり少女に聞いた。
「それって、どういうこと?」
「付いて来れば分かるよ。」
私が七鬼君に目をやると七鬼君が行こうと言ったので、付いて行くことにした。


「どこに行くと思う?」
「さぁな。」少女の後ろに付いて行きながら、七鬼君たちと話していると少女が歩みを止めた。
「ここだよ。」
「え?」
何とそこにあったものは、家一軒分ぐらいの空き地だった。
「空き地?」
「・・何もねぇな。」
「いや・・何か変な感じがする。何か・・何だろう?でも、悪い感じなんかじゃなくて、優しい感じ。」七鬼君がそう言うと、少女は少し嬉しそうだった。
「じゃあ、こっちだよ。」そう言って、少女は空き地へと入っていた。
「よし、じゃあ入ろう。」私たちは少し警戒しながら入ろうとしたその瞬間、足元からフワっと、暖かく包み込んでくれるような風が吹いた。

 優しい暖かい風が吹いた。足元はお花畑のような華麗な花で埋めつくされ、中央には沢山の花に囲まれた簡素で大きな日本家屋があった。
 
 足を踏み入れた空き地は別空間へと繫がっていたのだ。
「うわぁ・・すごい・・・」私は、その光景に目を奪われた。
「こっちだよ。」と、少女がお花畑の上を歩きながら大きな日本家屋へと向かっている。
「あっ、花がっ」
「大丈夫だよ。ほら」そう言って少女はジャンプをしてみせたが、花はまったく傷ついていなかった。
「ね?ほら、こっちだよ。」
「う・・うん。」
私は、七鬼君たちと顔を見合い、一斉に足を踏み出した。その時、またあのフワっとした宙に浮いているような錯覚を覚えた。
「柔らけぇ・・」
「何か、フワフワする・・」
「・・うん。」
「ふふっ。なかなか良いでしょう?この空間は私が作ったんだよ。」と、少女が誇らしげに言った。
「「「ええっ!?」」」私たちは、耳を疑った。
「全部、中で説明するからおいで。」そう言った少女は、軽い足取りで大きな日本家屋の所まで行き、十段ほどある入り口への階段を登った。私たちも少女の後に続き、木材でできた簡素な門の前へ立つと、突然門が開いた。
「ようこそ、私たちの家へ!」