「嘘じゃない。俺は今でも咲良が好きだ。」
入坂は本気でそう言ったと思う。
その目を見たら、嘘かどうかなんてわかるから。
「じゃあなんで?
なんで伶奈と付き合……」
言い終わる前に、何かが私を包んだ。
重なる2つの影。
夏の暑さなんてとっくに忘れた自分がいた。
それよりも、今この状況を整理するので必死で……。
私、今……
入坂に、抱きしめられてる。
「白峰、もうそれ以上何も言わなくていい。
白峰の言いたいことはわかるから。俺には伝わってる。
ごめんな、最低な男だと思えばいい。」
抱きしめられて、思い出す入学式の日。
私と入坂が初めて会った日に、私は彼に抱きしめられた。
あの時は驚きと、気持ち悪いと言う感情が混じり、入坂を変態扱いしたと同時に平手打ちをした私。
でも、今は。
今は嫌じゃないどころか、胸がドキドキと高鳴る。
入坂じゃない。
最低なのは、入坂じゃないよ………。
「最低なのは私の方だよ。
“咲良”さんや伶奈がいるってわかっていながら、入坂を受け入れているから。
私にも智樹がいるのに……。
この状況、嫌じゃないんだ。」
自分の気持ちを正直に言う私。
入坂はこれをどう思うのだろうか。



