「千加ちゃん!叶多くん来たよ!」

クラスメイトの女の子が私を呼んでくれる。
叶多が朝礼10分前なのに、サッカーを終えて来てくれたのは、ちゃんと理由があるからだ。

「千加!わりぃ、タオルちょーだい!めっちゃ汗かいた!!」

そういって、運動後は絶対私の教室に来て、タオルを借りようとする。

「もー、ちゃんと持ってきなよー。」

そういいながら私がタオルを持ち歩いてるのは、叶多が借りにくると思ってるから。
叶多の教室と私の教室は2教室分離れているから、私の教室に来ることはタオルを借りに来るときぐらいなんだ。

「さんきゅ!!」

そう言って急いで自教室に帰っていく叶多の後ろ姿を眺めるのが私の日常だった。