「先輩、ギュってしてください」
「……なに、急に」
「だって!先輩にこうやって会えるのいつぶりだと思ってるんですかっ」
私も学校があって、先輩も大学が忙しそうで。
先輩が卒業してから、会える時間がうんと減った。
でも、ワガママを言えるほど私は図々しくないから。
先輩からもらったネクタイをギュッと握って、そんな風に我慢してた。
「先輩不足で死にそうです」
「何それ。死なれちゃ困るんだけど?」
クスクス笑いながらそう言った先輩に、キュンと胸が鳴る。
だから、私はそっと先輩に寄り添った。
先輩の胸におデコをくっつけて、小さな声で。
「……寂しかった……」
毎日のように先輩の声を聞けて、先輩の顔が見れる。
そういうことが当たり前だったあの時が、どんなに貴重な時間だったのか、今になって痛いほど分かった。

