グイッと腕を引っ張られた。
急に近くなった距離にらしくもなくドキドキする。
バタンと扉が閉まる音。
鼓動が速くなる心臓。
「階段、暗くてお前の顔よく見えねぇから」
「え……」
「こっちのがまだ明るいだろ」
そう言った秀人は上を向いた。
私も同じようにして見ると、真っ暗になった空に、丸い満月が淡く光っていた。
「……で、言いたいことって何」
パッと掴んでいた腕を離す秀人。
……その、大きな手も、綺麗な指も。
聞いてて心地いい少し低めの声も、笑うとえくぼが出来る可愛い笑顔も。
言葉にして伝えたことは、なかったけど、私、本当は、
「……私、秀人のこと、大好きだった」
どうしようもないぐらい、好きだったんだ。

