トイレでメイクを直して、髪を整えて、完ぺきな状態で秀人に会いたい。
今までなら、絶対そうしてた。
……でも。
こんな風に必死になってる私も、悪くない。
マンションのエレベーターに乗って、最上階のボタンを押した。
……どうしよう、緊張してきた。
秀人と別れてから随分時間が経ってる。
今さら自分の気持ちを伝えて何になるんだろう?
もう無駄なのに。
……なんて、こんな考えばっかりだ。
怖がるな、私。
一歩踏み出さなきゃいけないんだよ。
でないと、私は、私のまんまだ。
チン、と音が鳴る。
屋上まで続く階段をのぼって、扉の前で私は小さく深呼吸をした。
もう夕陽は沈んでる。
もしかしたら秀人はもういないかも……。
でも、だからってここまで来て引き返すわけにもいかない。
ゴクリと唾を飲み込んで、重い扉をゆっくりと開けた。

