あそこは秀人のお気に入りの場所で、
私の手放したくない大切な場所だった。
下げていた視線をあげる。
私は、自分のことを好きになりたい。
バス停まで走る。
ちょうどきたバスに乗って、目的の停留所で降りた。
ここから秀人のマンションまで、走って10分。
「っ、はぁ、しんどい……」
足を止めずに走り続けて、やっと着いた頃には、もう夕陽は沈んでいて。
『ここから夕陽が沈むまでボーッとしてる時間が1番好きかも』
『あはは、私といる時間よりも夕陽かー!負けたー』
『それとこれとは話が別。なるみと一緒にいる時間も俺にとっては大切だし』
昔のことを思い出して、少し泣きそうになった。
冷たい空気が鼻にツンとくる。
冬場なのに、背中にベッタリと汗をかいた。
前髪が乱れてる。頬が赤い。

