「……何してんの?」
突然聞こえた声に、私は目を見開いた。
「あ……」
うまく声が出ない。
ドクドク、と心臓がフルスピードで脈を打ってる。
ふ、振り向けない……。
なんで?どうして?
どうして、高広先輩がいるんだ。
帰ったんじゃなかったの?
それとも、忘れ物を取りにきただけ?
グルグルとそんなことを考えていると、
トンと扉に手をついて、先輩は私の上から教室を覗き見た。
いきなり近くなった距離に、息が止まりそうになる。
背中、熱い……。
「……宗介ならとっくのとうに帰ったけど」
「ち、違うっ」
反射的に振り向いてしまった自分に、あぁと思う。
でも、私と目があった先輩は、少し嬉しそうに笑うから。

