カバンを持って、教室を飛び出した。



うう、柚木、心配してくれて本当にありがとう……。

でも人前で泣くのはみっともないし、恥ずかしい。


大事な親友を困らせたくないもん。



だから、早く引っ込め、涙っ!




「わっ」




俯きながら歩いていたせいで誰かにぶつかった。


慌てて謝ろうと顔を上げて、少し後悔する。

教室、飛び出すんじゃなかったなって。





「む、睦月……」





てっきりもう帰ったのかと思ってたのに。



ど、どうしよう。
だってあの時以来睦月とは話せてない。

な、なんて言っていいのか、分かんないよ……。




「……って、ちょっ、な、なに!?」




気づけば睦月に顔を覗かれていた。


反射的に後ろに下がろうとすると、グイッと手首を掴まれて引き寄せられる。