でもさ、周りにいるカップルと同じように手を繋いでいたらさ。
楽しそうに笑いあってたらさ。
「っ、」
あぁ、そっか、って。
付き合ってるのかぁって。
そういう風に考えちゃうんだよ。
先輩が楽しそうにしているところを見たくなくて、私は走った。
私の家と柚木の家は電車で3駅。かなり近い。
だから、電車に乗らずにずっと走った。
走りながら涙が溢れて。
「…う…っ、はぁ」
体力の限界がきた私は、線路沿いの道で、しゃがみ込んだ。
2人の光景が頭から離れない。
ズキズキと胸が痛い。
私は、声を押し殺して涙を流し続けた。

