「……ふ、あほ面」
下から顔を見上げられて、
いつかの時と同じふんわりと柔らかい顔で笑って。
目を見開いて何にも言えないでいる私に、先輩は。
「ぅわっ……!?」
グイッと、私の赤色のネクタイを引っ張って少し乱暴に顔を引き寄せた。
間近にある先輩の顔に、ドキドキと心臓が加速する。
いや、もはや痛い。
心臓痛い。
「小春」
目を合わせられないでいると、名前を呼ばれた。
まるで"こっち向け"とでも言ってるみたいだ。
うう、先輩ずるい。
なんてテクニシャン。
「もっと、こっち」
小さくて低い声。
それに大人しく従うと、先輩は耳元に顔を寄せて、
「ふっ」と息を吹きかけた。

