「大樹は『彼女?』って言ったんだよ。」



再会して始めて名前で呼んだ。



「あの日、壊れたんだ。私達の関係は。もう戻れないよ。」


「…………そっか。」


「大樹は軽い気持ちで言っただけかもしれない。だけど、あの日の惨めな想いは一生消えないから。」


「…………俺は甘えてた。莉乃は離れていかないから大丈夫だって。」


「…………。」


「これで吹っ切れる。あの日を後悔していたから。」



空を見上げていた大樹が私を見下ろす。



「莉乃、傷つけて悪かった。」


「もういい。」


「本当に…………やり直せないのか?」


「ごめん。」


「そっか。」



突然、手を繋がれて驚いた。


隣には陽平が立っていた。



「束縛するのは当たり前だろ。俺の彼女が元彼と飲みに行けば。」


「陽平。」


「俺、嫉妬深いから。」



陽平が大樹にニヤリとした。



「結婚式に呼んでやろうか?ただの同期のタイキさん。」


「…………子供だな。遠慮しておく、京都から来る金はない。」