作りかけの料理を再開した。


沈黙の陽平がなんか怖く感じた。


お互いに初めての恋人ではないだろう。


陽平にも過去はある。



「莉乃、金曜の飲み会って?」


「同期で。」


「どこで?」


「決まってない。」



案外と嫉妬深いみたいだ。


でも愛されている証拠だ。



「迎えに行く。」


「はっ?いい。他にも同期がいるし。」


「酔い潰れて持ち帰られたら困るし。」



それは陽平だろ。


これも消したい過去だ。


酔い潰れて持ち帰られたのは初めてだった。ってか過去に一度しかない。



「ないから。」


「店が決まったら教えて。」


「…………わかった。」



退きそうにない陽平に諦めた。


今更大樹とヨリなんて戻す訳ないのに。


陽平は心配しすぎだ。



『ヨリを戻す機会だと思った』



大樹は違うかもしれないが、私はヨリなんて戻す気もない。


一度裏切られた心は修復なんてできない。