「莉乃こそ、勝手に決めるな!」



背後で陽平の振り絞るような怒鳴り声が聞こえてきて、踏み出した足が止まる。


いつもと違う陽平の声に振り返れば、私を睨む陽平が立っていた。


一度も見た事のない表情に固まる。


大通りにある歩道に立つ私達に視線が集まる。


それでも陽平の言葉は止まらない。



「莉乃は簡単に別れるって言うよな?」


「簡単には言ってない。」


「言ってるだろ。さっきも簡単に別れるって言うし、今も目の前から簡単に消えようとしてる。」


「だから簡単には言ってない。私は最近の陽平の行動から決めた事なの。」


「俺の行動?毎日莉乃と会えない事?」


「それもある。」


「他にもある訳?」



陽平が一歩一歩近づいてくる。


触れ合うぐらいの距離に立った陽平の見下ろす瞳と交わる。


いつもの陽平の雰囲気とは明らかに違う。


それでも戸惑う事なく、思っていた事を吐き出していく。