「陽平。」


「莉乃?」


「仕事だったんじゃないの?」


「…………。」


「嘘ついたんだね、私に。」


「ちが…………。」


「この状況で違うって言える?私はそんなバカな女なの?」



陽平の言葉を遮った。


溢れる涙で視界が歪む。


ぎゅっと唇を噛み締めて踏ん張る。



「陽平、望み通り別れてあげる。」


「待て!莉乃!俺は望んでない!」


「もう遅いよ。終わりにしよ、陽平。」



私は陽平に近づいていった。


目の前に立つ陽平を見上げる。


絶対にしないと思っていた。


でも許せなかった。



パァーン!



大きく振り上げた手を陽平の頬に振り下ろした。


絶対に頬を殴るような惨めな女にはなりたくなかったけど許せなかった。


溢れる涙を腕で乱暴に拭う。



「さよなら。」



陽平に背を向けて、バーを出て行こうと早足で歩く。


歪む視界には池田さんと山中が映る。