2人が名前で呼び合っているので、何故2人で飲んでいるのかも察知できる。


これは私の問題だ。


バーに入ってから目に映り込んでくる陽平の姿をじっと目で追い掛ける。


楽しそうに飲んでいるのが伝わってくる。


私の心が折れた。


この一瞬で陽平が信じられなくなった。


この一瞬で陽平を好きだった心が脆くも崩れた。


この一瞬で陽平との恋は終わる。



「片桐さん、大丈夫ですか?」


「大丈夫。これでも伊達に年は重ねてない。」


「でも泣いて…………。」


「泣いてない。」



山中の言葉を遮った。


例え瞳から涙が溢れていても、私は泣いてない。


陽平に向かって一歩足を踏み出した。


これで終わりにする。


陽平を想うのは終わりにする。


盛り上がる輪の前に立てば、向けられる数人の視線。


勿論、陽平の視線も向けられる。


目と目が合う。


驚きに目を見開いていく陽平がスローモーションに映る。