- 凛梨side - 

私、小林凛梨。小学5年生。
特に何かずば抜けて上手ということがない、あえて絞り出して言えることは今まで1度も遅刻したことないという位かな。
まさに、「どこにでもいる子」って感じの女の子。

今日から夏休み。
私の家は決まって長期休みはおばあちゃんの家に行って、いとこの蒼空やお母さんのお姉ちゃん達と過ごす。
おばあちゃんのことは嫌いじゃないし、蒼空達と過ごすのはとっても楽しい。
けど、もっと友達のヒヨちゃんや沙蘭ちゃんの家みたいに家族で旅行したいと思ってしまうのが本心なんだけど...

今年の夏休みもいつもと変わらないだろうなぁと思っていた私は1mmも思ってなかった。
この夏、私が「恋」に出会うなんて...


「こんにちは。」

ある日、見知らぬキレイな女の人が玄関に来た。
なんでか私は瞬発的に大きな柱の影から覗いていた。(なんでだろう?)
女の人を見ると何かを探しているのかキョロキョロしていた。
私が何を探しているのかなと思っていると、おばあちゃんが2階から足音をたてて降りてきた。
すると、あわてて来たのか私と同じ年位の男の子が汗をかいてやって来た。
女の人も男の子が来てから話そうとしていたのか、おばあちゃんと話始めた。

「お久しぶりです。覚えていらっしゃるかしら。隣の山村の娘の萌美です。」

「あら、あのおてんば娘の萌ちゃん?」

「はい、親がご挨拶に伺いなさいと。」

「まあまあ、わざわざ暑い中ありがとうね。あら、そちらの男の子は?もしかして息子さんかしら?」

「はい、息子の灯斗です。ほら、灯斗。ご挨拶しなさい。」

「こんにちは。」

「こんにちは。灯斗君は何年生?」

「5年生です。」

「私の孫の凛梨も5年生なのよ...。」

「あの...もしかして柱の影にいる子ですか?」(うそ...。いつから気づいてたの。)

「あら、ホントね。凛梨、何してるの。お客様にご挨拶しなさい。」

「あっ…こんにちは。」

「こんにちは‼ なぁ、凜梨って呼んでもいい?」

「あっ…うん。」

「じゃあさ、凜梨。今から遊びに行こーぜ‼」

「えっ…今から?」

「凜梨に見せたいものがあるんだ‼
ほら、行こーぜ‼」

そう言うと灯斗は私の手を握った。
その手はすごく優しくて、なぜか安心した。