自室を出て向かう所はただ一つ――
茉莉の部屋だ。
コンコン
私の部屋の向かいにある部屋をノックして入る。
部屋の灯りは既に消えており部屋は静寂に包まれていた。
「遅くなってごめん」
「いや、俺こそ毎回こんな事ごめん」
「気にしないで。じゃあ明日は学校だから早めに横になろう」
私が1番嫌いな時間が始まる――
「明日は学校だね!楽しみだな〜」
「そうだな。俺も楽しみだ」
「あっでも私、翔と“違うクラス”だからちょっと残念」
「今年は離れたもんな。まぁでも恭が居れば退屈はしないだろ」
翔が家に泊まった時、必ず行う事がある。
それがこれだ。
私が茉莉になりきって翔が眠るまで会話し続ける。
なりきるなんてそう簡単には出来ないのだが私達は“双子”だ
声を少し高くしてややゆっくり喋る。
茉莉が声を出せていた時の事を思い出してやれば私は茉莉になれる。
『茉 莉 の 声 代 わ り』
それが私の、翔の特別になる唯一の手段
