感謝の気持ちをこめ深々と頭を下げる


「先程はありがとうございます。貴方に助けて頂かなければきっと一生の傷になっていたと思います。本当にありがとうございます」


本当は言葉だけではなくきちんとお礼したいけど、今日初めて会ったのに食事とかをご馳走されるっていうのも彼からしてみたら嫌かも知れないししょうがないよね。


「いや俺はたまたま通りかかっただけだから気にしないで。じゃあ俺はこれで、変な輩が多いから帰りとか気を付けてね」

こういうのを神対応って言うんだろうな、と思った。

彼は小さく会釈をしてその場を立ち去っていった。


格好良かったな……何処かのヒーローみたいだった。

彼の後ろ姿を見ながらそんな事を考えていたら横からお腹が鳴る音がして妹を見る。

お腹を抱え恥ずかしそうに俯く彼女はとても愛らしい。嗚呼抱き締めたいッ!

深呼吸をして抱き締めたい衝動を抑える。

「茉莉ご飯食べに行こうか!」

何事も無かったかのように振る舞う。あれは悪い夢、覚えていなくていいものなのだから――