妹が頷いたのを確認して彼の方に振り返る。

壁に寄り掛かり此方を見ていたであろう漆黒の瞳と視線が交わり息を呑む。

さっきは気にも止めていなかったけど綺麗な瞳……
黒の中に意思の強さが見え隠れしていて目を奪われる

それと同時に胸の奥が高鳴る。

これはなに?この感情はなんなの?わからない、わからない。胸がドキドキして名前も知らない彼をずっと見ていたいと思う。

もしかして私――

トントン

肩を優しく叩かれた事で意識を戻す。

叩かれた肩の方をみると茉莉が心配そうに見つめていた。

「あっごめんね。なんでもないから大丈夫よ」


そう応えると茉莉はいつも通りの優しい笑みを浮かべた。

……いつも通りの笑顔の筈なのに違和感が働いたのはきっと気のせいよね。