「あれ?もしかして……高梨?」


私を見て驚いたような表情を浮かべている彼は桐島伊織。数年振りに再会した高校時代の同級生。


そしてあの日、人生初の告白をした私をあっさり振ったこの世で一番会いたくなかった男。


「……桐島くん、久しぶりだね」


私はそう答えながら動揺している気持ちを必死に誤魔化すように小さく笑みを溢す。


「えっ!?美和ちゃん、桐島くんと知り合いなの?」

「う、うん……。高校の時の同級生……」


優奈は私と桐島くんを交互に見て、すごい偶然だね、と呟く。


「へぇ……高梨さんと伊織って同級生なんですね」


柏木さんは椅子に腰かけると私を見てニコリと笑みを溢した。


……まさか、こんなところで桐島くんと再会するなんて……。



もう二度と会いたくない。


そう思っていたのに。


黙って俯いていた私の目の前の席に桐島くんは静かに腰を下ろした。


しかも何で私の前に座るかな……。


「あっ、私は森下優奈です。仕事は主に受付業務を行っていまーす!」


優奈は得意の男ウケする笑顔を浮かべながら、元気いっぱいに自己紹介をしている。


そんな優奈を横目に私は誰にも気付かれないように小さくため息を溢した。


「森下さんみたいな子が会社の受付にいたら、きっと毎日癒されそうですね」


和やかな雰囲気の優奈と柏木さんの会話を聞きながら、私は正面に座っている桐島くんをちらりと盗み見る。



…………何で桐島くんがここにいるんだろう?
やっぱり優奈からの誘いでもこんなことになるなら断れば良かった。


「……何?」

「な、なんでも無いです!」


桐島くんが視線を上げた瞬間、ばっちりと目が合ってしまい慌てて視線を逸らした。


「そういえば伊織と高梨さんって高校の同級生って言っていましたけど、伊織の高校時代ってどんな感じだったんですか?」

「え?」



急に話題を振られ驚いている私を見て柏木さんは、にこにこと優しく微笑んでいる。


「俺と伊織は大学からの付き合いなので」


どんな感じだったのか気になって、と呟いて柏木さんはくすくすと笑みを浮かべる。


「ええ……っと……ですね。桐島くんは男女共に人気があって、いつもみんなの中心にいるような感じでしたね」


桐島くんのことを思い出せばいつも周りにたくさんの人がいて、太陽みたいな明るい笑顔を浮かべている姿を思い出す。


……地味であまり目立たなかった私とは正反対で、明るくて優しくて人気者だった。


「……へぇ。俺の伊織の印象とはだいぶ違いますね」