星名湖杜。



どこを見てもその名前があった。



英語、生物、政経、家庭で1位。


そして、全教科90点越え。


完璧、ライバルだな…。


俺はため息をつかずにはいられなかった。



「湖杜ちゃん、ホントすごい!尊敬しちゃう」



園田さんがハグして星名さんは困惑していた。


スキンシップになれてないところを見ると…もしや、二次元好き?


見た目からして好きそうだが、本当にそうなのかもしれない。



「おはよ、昴」



「…っ、あっ、おはよ」



しまった…。


星名さんに目を奪われていて気づかなかった。


いつもなら足音で気づくのに。



「何見てたの?」



「この前の考査の順位。俺を抜いたヤツがいるんだよ」



「へえ~。誰?」



俺は成績表の一番上にあるあの名前を指差した。


すると彼女は、ふーんと興味があるのか無いのかイマイチ読めない反応をしてきた。


ひとまずここは誉めなくては…。


彼女の名前を必死に探して頭の中から適切な言葉を引き出す。



「美湖(みこ)すごいじゃん!初めて50番内に入った!…ほら、あそこ!英語と政経」



「うん…そうだね。良かったよ。昴が教えてくれたおかげだね」



何で。 


何で喜ばない?


今日はやけに大人しい。


そんなに星名湖杜が気になるのか?


…まあ、転校してきていきなり一番だから気にならない方がおかしいか。



「星名湖杜が気になる?…もしかして、知り合い?」



冗談半分で言ってみた。


意地っ張りな美湖のことだから、「ぜんっぜん、気にしてないよ~」なんて笑い飛ばすだろう。


--と思っていたのだが。



「気になるよ、ものすごく。理由は…言えないけど」



美湖は謎の言葉を残して自分のクラスに向かって行った。