ガッシャーーン!




穏やかな朝が一瞬にして壊れた。


大変なことになっているのではないかと怯えながら振り返ると、わたしの後方で自転車が派手に転がっていた。



「きゃっ」



思わずわたしは悲鳴を上げてしまった。



額から真っ赤な血を流した男子生徒がこちらを睨んでいたからだ。



助けろってこと…?



無言の訴えを聞き流せるわけもなく、私は凍ったように動かない手足に意識を集中させ、彼の元へ歩みを進めた。



しかし、わたしが近づくと額の血を豪快に右手で拭ったかと思ったらすぐさま立ち上がり、そのまま自転車にまたがった。



「えっ…、あの…えっ!大丈夫ですか!?」



声をかけたものの、相手は何も答えず、ペダルに力を入れ、漕ぎ出した。


わたしは去りゆく彼の後ろ姿を呆然と見つめた。



一体、何だったのだろう?

  

頭に浮かんだ疑問符を振り払うように、わたしは全速力で駆けた。