あぁ…暑い。


このままでは死んでしまいそうだ。


考査が終わり、席替えが行われ、俺は窓に一番近い列の一番後ろになった。


左を見れば海よりも青い空。


右を見れば…


あの子が目に入る。


最近は暑いのか、専ら一つに結っている。


ポニーテールではなくて、下目に結うあれだ。


見え隠れする首筋に、俺はしょっちゅう目を奪われる。


もはや、授業どころではない。


そして、あの日の丸メガネは相変わらずで、その下のまん丸の瞳は、太陽の光を受けてキラキラ輝いていた。



「ことちゃん、やっと夏休みだね!あたし、ことちゃんと海に行きたい!ねえ、良いよね?」



「はい!楽しみにしてます!」



ぜひともいろんな人に見てほしい。


この透き通った笑顔を。


彼女は世の中のありとあらゆる邪気を吸い込んでいない。



でもこの夏は…


キミに教えなきゃならない。


世の中を渡って行くために、必要な、大事なことを。


だから…ごめん。


邪魔するよ。



「星名さん、ちょっといい?」