部活が終わり、ナナミ先輩と私の2人で部員達の試合の出場競技の書き込みをしていた。

外を見るとすでに辺りが茜色と暗闇のグラデーションとなっていた。
9月に近づくにつれて日の長さが短くなっているのだろう、辺りを刻々と暗闇へと包んでいく。


「ま、大体の人は決まってるし、後の人はまた明日にしよっか!暗くなってきちゃったしね!」


ナナミ先輩が手を上に伸ばし、思いっきり背伸びしながら言った。


「それに、今日は大事なこと聞いたし、サエちゃんとの仲は深くなったかな?」


私の顔をじっと見て、にっこりと微笑んだ。




それは約30分ほど前、元々部活は平日なので早々と終わり、リョウちゃん、ナナミ先輩、私の3人で部室に居たのだ。
リョウちゃんは私が終わるのを待っていてくれて、3人で話していたら流れが急に恋の話となったのだ。



「リョウコちゃんとサエちゃんって彼氏いるのー?」


ナナミ先輩のこの一言で恋の話が始まってしまった。
この季節とこの時間帯っていうシチュエーションもいけないのだろう、
夏の終わりかけの夕暮れ時、部室という狭い部屋の中でなんだか青春してるように感じてしまったのだ。
何だか話しても良い雰囲気が醸し出されていたのだ。
そこに乗っかってしまった私、サラッと言葉に出していた。


「彼氏はいませんよ、好きな人はいますけど」
「誰々!?私が知ってる人かな?」


目を輝かせて食い気味に聞いてきたナナミ先輩、リョウちゃんは私の気持ちを知っているため、急に話した私に驚いていた。



「でも、ふられちゃいました。この前。」


ハハッと困り顔で返答した私に、思ってもなかった言葉が出てきたためか、どう返そうかと困るナナミ先輩がいた。


「でも、大丈夫ですよ、直ぐに!とかは無理だけど徐々に気持ちを変えていこうって思ってるので」


言葉にするとやっぱりツライ、諦めなきゃいけないんだと自分自身に言っているのだから。


ナナミ先輩はジーッと見つめたあと

「サエちゃん、意外とね。本当に意外だなって人ほどサエちゃんのことみてくれてるよ?今はツライ状態だけど、周りをよーく見渡すとさ、助けてくれる人って現れるもんだよ。私はサエちゃんを助けたいけど。でも、私にはサエちゃんを助けられないのよ。その人が自分で行動してサエちゃんを助けてくれるからさ、ちょーっと我慢してね。」



なんだか占い師のような発言で、意味深な言葉を私にかけた。
リョウちゃんもよくわからなかったのか、私と同じように戸惑った表情をしていた。
ナナミ先輩の思考ってなかなか癖が強いんだな。

その後、リョウちゃんの携帯に家族から連絡が入ったのか「ごめん」と言って帰って行った。
リョウちゃんが帰った後は黙々と記入作業をして今に至ったのである。




「ナナミ先輩って、占いとか好きですか?」
「何?急に?」
「いや、何となくきいてみただけです」
何だそれ?って感じで可笑しそうに笑いながら、まぁまぁ好きかなーっと答えてくれた先輩。

やっぱり占い師の本とか熟読してるから、アドバイスとかの方法を知り尽くしているのだろうか?

自分の口から占い師になれそうですねなんてことはいえない。
言ってしまったら、この人は面白がって、さらに占い師としての役割で私の事情を事細かに聞きそうだ。
そして、わたしはナナミ先輩好きだから拒否できなくなるのだ。
それだけは絶対嫌だ。

「わたしもよく雑誌の占い見るので、好きなんですよ」
無難な返しをして、そのまま部室を出た。