身体中のロープは解かれ 処刑台から降ろされた。

ふらつく私に手を貸す看守。
その顔は気まずそうな表情を浮かべている。

"ありがとう" と手を借り、支えてもらいながら ステージから降りる。

地上に降り立つと軽い羽織を肩に掛けられ、その端を握る。

父上の馬車に同乗させて頂き、王宮に帰る。

「お前の部屋はいつでも使えるように 管理させている。

今からでも使えるはずだ、何かあればShalloutに頼みなさい。」

「解りました。」

久しぶりの王宮。

見慣れない顔の人も多く、その人たちには不審な目で見られた。

が、自室に入ると 皆納得がいったようだ。

直ぐさま自室に備え付けられている風呂に入る。

水で身体を流す。
私の身体から伝う水は泥色だ。

今朝方 身体を洗ったとはいえ、何年も真面に風呂に入っていなかったため 当たり前なのかもしれない。

石鹸の泡もたちまち茶色く濁っていく。

背中は水がかかるだけで痛いけれど衛生観点上 良くないだろうと思ったので、しっかりと流した。

1人、呻き声を上げながら。

「Victor様、タオルとバスローブを置いておきます。

今日1日はゆっくりするように、とVelumondo様が仰っていました。」

浴場の外から聞こえるShalloutの声。懐かしい。

主に私の身の回りの世話をしてくれていた侍従の1人。

「分かった、ありがとう Shallout。
あぁ、そうだ……私の髪を切ってくれないか?」

「Victor様の髪を切るなんて、そんなこと……」

「幼い頃はShalloutが私の髪を切ってくれていたじゃないか。」

「……それはVictor様が理髪師を拒んで逃げ回るために仕方なくしたことで……」

Shalloutは嫌がったが最終的には渋々、といった様子で引き受けてくれた。