バシンっ

「いってー」

なにかで頭を叩かれた。いつの間にか寝ていたようだ。教室の時計を見ると、夕方の時刻をさしていた。

「よく寝てたわねダリクト。先生も呆れていたわ。」

長い黒髪が特徴の、クラスメイトだろうか?これまた知らない女生徒が教科書を持ってこちらを見ている。

どうやら自分は教科書でたたき起こされたようだ。

「あー…痛いお知らせサンキューな」

そう言ってカバンを持ち、早々と帰ろうとすると

「待ちなさいよ!」

と後ろから声が聞こえた。振り返ってみるとさっきの女生徒だった。手を腰にあて、眉をよせながら立っている。自分になんの用だろうか?ていうか関わりたくないんだが…

「これ。先生から預かった課題。やってこないと次が怖いわよ?それと、私の名前は紅葉桜。」

「…ありがと。紅葉。」

無表情で受け取る。それがいつもの陸人の‘顔‘だ。

紅葉に背を向け歩き出す。陸人の家はこの高校からそう遠くない。短いのか、長いのか、商店街を抜けて家に着いた。

重く冷たい取っ手に手をかけ、ドアを開けた。

「ただいまーって誰もいないか」

陸人の両親は今海外にいる。理由は「陸ちゃんのため」だそうだ。

「なにが陸ちゃんだ。なにが」

と独り言を呟いた。

とりあえず腹が減ったので冷蔵庫の中のタッパーに詰め込んである夕食をテーブルに置き、温めもせず食べる。

ひとりで飯を食べて風呂に入って寝る。それが俺の日課だ。

風呂に入りながら思い出した。

「あ、課題…だっりーなぁー」

思い出した以上、やるしかあるまい。…が、授業中寝ていた馬鹿には当然わからずじまいだ。

「あーもうやめた。寝る。俺は寝る!」

一問も解けなかった課題を机に置いたまま、陸人はベッドにもぐった。

明日何があるかもしらずに。