「もう追ってこないだろ」

200メートルほど歩いてようやく足を止めた先生。

「先生、ありがとう」
「いや」

先生は私の手を離して腕時計に視線を落とす。
先生の温もりが消えていくことが寂しい。
今、少しだけそんな風に感じたのは気のせいだろうか?

「こんな時間に1人でフラフラしてると危ないぞ」
「え?まだ6時だし」
「もう冬なんだから6時でも充分暗いだろ?」
「…ブッ」

いかにも真面目な村田先生らしい発言に思わず吹き出した。
本当に深刻そうな顔で言うから余計におかしい。
まあ心から心配してくれてるのは伝わるし悪い気はしないけど。