あの美雪先生に勝とうと思うほど私も身の程知らずではない。
そもそも2人は本当に付き合っていたのかな？

1人でモヤモヤしていると、横から文幸の視線を感じて顔を上げた。
文幸が珍しく真面目な顔で私を見つめている。

「村ちゃんなんかやめて俺にしとけば…？」
「え？」

文幸の言葉と真剣な表情にドキッっとする。
冗談を言っているようには思えなかった。

何か言わなきゃ…。
口を開こうとした瞬間、私のスマホの着信音が鳴る。
ディスプレイには香川の名前が表示されていた。

「ごめん、電話」
「おう。気にせず出て」
「文幸…」
「さっきのは冗談。ほら、早く出たほうがいいぞ」

文幸はそう言って笑顔で走っていってしまった。