その前に先生は家にいるんだろうか?
せっかくの誕生日だし彼女と一緒に過ごしているかもしれない。
今日はやけに帰るのが早かったから、もしかしたら…。


「よしっ。迷ってても仕方ない」

バラの花々に囲まれた先生の家。
私はフェンスの隙間から中の様子を伺う。
中腰で家の中を覗く私は完全に不審者だ。

「自転車ない…」

先生愛用の黒いマウンテンバイクがない。
とっくに学校を出たはずなのにまだ家に着いていないんだろか?
それともやっぱり彼女と…。

何だか怖いな。
先生のプライベートを深く知ることが。
出直そうと立ち上がった瞬間、後ろに人の気配を感じた。


「…あら?一沙ちゃん?」