「嫌なら俺が届けてやろうか?」

文幸が心配そうに私の顔を覗き込んできた。

「ありがとう、大丈夫。私も先生とちょうど話したいと思ってたところだし…」
「え?」
「あ、勉強のことね!」

慌てて誤魔化したけど、文幸は少しだけ不思議そうな顔で私を見ていた。


***


「はぁ…」


薄暗くなり始めた空を見上げて小さなため息をつく。
私は今、村田先生の自宅の玄関前に立っている。

「どうすっかなぁ」

実際に家の前に立つとますます憂鬱な気持ちになってしまう。
先生とは相変わらず気まずいままだ。
それなのに、どうして人のプレゼントを渡しに行かなきゃいけないんだろう?