両手いっぱいのこの愛を





呆気にとられてその後ろ姿を見送る会長。

そして残された清波以外の3人も気まずそうに「どうする?」と小声で相談した後、


「俺たちもちょっと考えます」


部屋を後にした。




「……」


清波は扉が閉まるのを見届けた後振り向き、こてんと首を傾けた。




「あ、どうぞ紹介を続けてください」


「お、おおお、お前のせいで新入部員がひとりもいなくなっちまっただろうがぁ!」



声を荒げたのは竹中だった。




「俺がいるじゃないですか」


「"まとも"な1年がひとりもいねぇって意味だよ!」


「落ち着いてくださいモブ野郎」


「お前…俺先輩だぞ?敬意ってもんをしらねぇのか?」


「すみません…モブ先輩…」


「……」



竹中が額に青筋を浮かべ腕捲りをしようとした時、「落ち着いてくれ」と会長はため息をついて竹中を止めた。

そして、立ち上がるとさらさらの黒髪を靡かせて闊歩し窓から青空を眺めた。

それは誰から見ても痛々しく、哀愁漂う背中だった。