部屋の中に吐息だけが響いている。
今日出会った人とこんなことしてしまった。こういうのは初めてで自分の行動に対する驚きがまだ消えないが、罪悪感はなかった。
「このあとだけど」
息を落ち着ちつかせてから彼が言った。
「俺に一緒にいて欲しい?」
嫌な質問をする。と思った。時計を見ればもう朝の10時を回っていた。彼に用事があるのなら無理はさせたくない。きっとこうして聞いたと言うことは、何かしら予定があるのに違いない。
「仕事や用事があるのなら行って。」
寝返りをして彼に背を向けた。
「でも本音は居て欲しい。」
言わずには居られなかったのだ。重い女にはなりたくないし、恋人でもなんでもない私には彼を縛る権利などない。
それでも、言ってしまうほど離れ難い。
やっぱり言うべきではなかったか、そう思った時、背中から腕が回され、また彼の体温に包まれた。
「やっぱあんたいい女だよ。」
