どれぐらい時間が経っただろう。

それは随分長い時間に感じた。

肩にあった翔太の右手が、遠慮しているかようにゆっくりと体の前に降りてきたか。

翔太は右手があたしの胸の上あたりに少し触れた。

あたしは反射的にその手をよけて、翔太から唇を放した。

そしてあたしは急いで椅子から立ち上がった。

あたしはドキドキして、心臓が飛び出しそうだった。

息苦しくて、そしてこれから起こってしまいそうなことを想像したら、急に怖くなった。

「翔太、あたし帰る。写真見せてくれてありがとう。」

そう言って、あたしは一方的に翔太の部屋を後にして、家を出て自転車に飛び乗った。

翔太の唇の感覚がまだあたしの唇に残っている。

初めてのキス。

嬉しいけれど、恥ずかしい!

翔太の顔がまともに見られない!

そして、片方の胸にも、翔太に触れられた感覚が残っていた。

あたしは、家へは帰らず、夢中で自転車をこいだ。

そして、少し離れた場所にある公園に自転車を止めて、近くにあったベンチに座った。

落ち着かなくちゃ・・・。

翔太の唇。

翔太の唇とあたしの唇。

キスしたんだ、あたし、翔太と。

翔太とキスしたんだ!

そのとき初めて、

「やったー!!」

と思えた。

あたしは何度も、翔太とのキスの瞬間を頭の中でリピートした。

この唇で、あたしは翔太を感じたんだ。


翔太が好き!

翔太!

翔太、あなたが好き!

大好き!


そのとき、ケータイのメールが届いた。

翔太からだ。



受信

題名(無題)
本文 怒った?



あたしは、怒ってなんかいない。

喜びで一杯。幸せな気分だ。



題名 Re:
本文 びっくりした。怒ってないよ。

送信



受信

題名 Re:Re:
本文 良かった!また月曜な!


この頃には、あたしも随分と気持ちが落ち着いていた。

翔太からのメールがいつもの倍以上に嬉しかった。